渓谷を讃えて

美しいマノアをこよなく愛した夫妻の邸宅と渓谷へのオマージュ

ナタリー・シャック
写真
ジョン・フック

一年中、緑に輝く美しいマノア渓谷は、訪れるたびに思わず深呼吸したくなる場所だ。それは、都会が目の前から姿を消し、豊かな自然に囲まれた手入れの行き届いた古くからの邸宅の並ぶ景色が広がるマノアならではの魅力であり、突然舞い降りてくるうっすらとした霧や季節を問わず一年中渓谷にかかる美しい虹のせいであるかもしれない。
マノア渓谷にあるマノア・ヘリテージ・センターは、この緑豊かな土地への慈しみに溢れている。広さ3.5エーカーのセンターは、マノアの中心を通るマノアロードに面して建っているが、その前を何度通っても、その存在に気づかない人は多い。この私設の教育スペースは、一般にはほとんど知られていない自然文化遺産で、この街の豊かな歴史に触れることができる場所だ。 多くの役割を果たすこのセンターには、完全な状態で保存されているヘイアウと、ハワイ諸島への最初の入植者によってハワイに持ち込まれた在来植物の庭園、そしてハワイ文化継承者のために用意されたスペースがある。ここでは子どもたちが、ハワイを形成する上で欠かせない先住民の伝統技術(初期のハワイ人による古代ヘイアウの建築法など)を学び、ハワイの豊かな歴史に触れることができる。
現在のマノア・ヘリテージ・センターが確立されるまで、実に1世紀以上の歳月がかかった。その歴史は、1837年に宣教師としてこの島に到着したサム・クック氏の親戚が、王室の子供たちのための王族学校を設立したことに遡る。この学校に寄宿した生徒の中には、カメハメハ2世と3世、バーニス・パウアヒ・ビショップ王女などがいた。 1996年、ともに熱心なアーキビストで収集家であった故サム・クック氏と彼の妻メアリー氏は、ハワイの貴重品を保存し、人々と共有するために、このセンターを設立した。「主人と私の夢が形になりました」とメアリー・クック氏は語る。
メアリー氏にとってこのプロジェクトには、特別な思い入れがある。というのも、このセンターは、彼女の住む家の裏庭にあるのだ。夫妻は、1911年にサム氏の先祖が家を建てて以来、親戚やデベロッパーに分割されていた土地を買い戻し、マノア・ヘリテージ・センターを立ち上げた。彼らは、長年かけて専門家や地域社会と共同で、かつてマノアの農民たちが豊作祈願のために訪れた“クカオオ”と呼ばれる敷地内にある農業のためのヘイアウ(古代寺院)の保存に努めた。庭園を作り直して侵略的外来種の植物を取り除き、島中から集めたハワイの固有種や絶滅危惧種の植物を植え直した。2018年の初めに「ハリー&ジャネット・ワインバーグ・ビジター・ハレ」が完成し、毎年多くの就学児が訪れる教育スペースとなった。現在、このスペースでは、フラやひょうたんを使ったアートといった、文化的なワークショップが開催されている。
クック氏が公開している貴重品の中で、もっとも注目に値するのは、メアリー氏が今も住んでいる彼らの家そのものであろう。1911年に建てられた“クアリイ”という名の歴史ある美しい家は、丘の端に堂々とそびえ立っている。その廊下を歩けば、窓枠に収まったマノア渓谷の美しい稜線の眺めのほかにも、多くの魅力が詰まった建物であることに気づくだろう。クック家が生涯を通して収集した、ハワイの歴史的な古書や写真であふれた家は、まるで建物自体が博物館であるかのようだ。
D. ハワード・ヒッチコック氏によるカウアイのタロ畑を描いた美しい油絵の風景画や、ピーター・ハード氏によるプランテーション時代の夕日に染まった昔の鉄道、ピーター・エマート氏によるホノルルダウンタウンの風景画に色を塗ったビンテージ作品。「これらの絵は、キャプテンクックとともに来航した絵描きをはじめ、ハワイを訪れた芸術家たちの目を通して見たハワイの素晴らしい歴史を綴っています」とメアリー氏。
メアリー氏は、このセンターの最大の目的について、ハワイの伝統と歴史を尊重し、保存することの大切さをハワイを訪れる人々に知ってもらうことだと語っている。「より多くの人々にハワイの歴史と遺産を知ってもらう必要があります。そして、ハワイを訪れる全ての人に彼ら自身の文化遺産も大切にしてほしいと思うのです」。

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Valley Heritage

Season 7 Episode 2
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「より多くの人々にハワイの歴史と遺産を知ってもらう必要があります」とマノア・ヘリテージ・センター共同設立者のメアリー・クック氏。

マノア・ヘリテージ・センターには、完全な状態で保存されているヘイアウとハワイ在来植物の庭園がある。メアリー・クック氏と故人で夫のサム氏は、何年もかけて専門家やコミュニティと協力してこの敷地を保存してきた。

クック夫妻は、生涯を通して初期のハワイの絵画を収集している。

様々なコミュニティプログラムを提供するマノア・ヘリテージ・センターのエグゼクティブディレクター、ジェシカ・ウェルチ氏。

“クアリリ”と呼ばれるクック一家の邸宅は、それ自体が博物館のような美しいチューダー様式の建物だ。

ハリー&ジャネット・ワインバーグ・ビジター・ハレでは、毎年、児童向けのフラやひょうたんを使ったアートといった様々なカルチャーワークショップを開催している。

渓谷を讃えて

美しいマノアをこよなく愛した夫妻の邸宅と渓谷へのオマージュ

ナタリー・シャック
写真
ジョン・フック
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一年中、緑に輝く美しいマノア渓谷は、訪れるたびに思わず深呼吸したくなる場所だ。それは、都会が目の前から姿を消し、豊かな自然に囲まれた手入れの行き届いた古くからの邸宅の並ぶ景色が広がるマノアならではの魅力であり、突然舞い降りてくるうっすらとした霧や季節を問わず一年中渓谷にかかる美しい虹のせいであるかもしれない。
マノア渓谷にあるマノア・ヘリテージ・センターは、この緑豊かな土地への慈しみに溢れている。広さ3.5エーカーのセンターは、マノアの中心を通るマノアロードに面して建っているが、その前を何度通っても、その存在に気づかない人は多い。この私設の教育スペースは、一般にはほとんど知られていない自然文化遺産で、この街の豊かな歴史に触れることができる場所だ。 多くの役割を果たすこのセンターには、完全な状態で保存されているヘイアウと、ハワイ諸島への最初の入植者によってハワイに持ち込まれた在来植物の庭園、そしてハワイ文化継承者のために用意されたスペースがある。ここでは子どもたちが、ハワイを形成する上で欠かせない先住民の伝統技術(初期のハワイ人による古代ヘイアウの建築法など)を学び、ハワイの豊かな歴史に触れることができる。
現在のマノア・ヘリテージ・センターが確立されるまで、実に1世紀以上の歳月がかかった。その歴史は、1837年に宣教師としてこの島に到着したサム・クック氏の親戚が、王室の子供たちのための王族学校を設立したことに遡る。この学校に寄宿した生徒の中には、カメハメハ2世と3世、バーニス・パウアヒ・ビショップ王女などがいた。 1996年、ともに熱心なアーキビストで収集家であった故サム・クック氏と彼の妻メアリー氏は、ハワイの貴重品を保存し、人々と共有するために、このセンターを設立した。「主人と私の夢が形になりました」とメアリー・クック氏は語る。
メアリー氏にとってこのプロジェクトには、特別な思い入れがある。というのも、このセンターは、彼女の住む家の裏庭にあるのだ。夫妻は、1911年にサム氏の先祖が家を建てて以来、親戚やデベロッパーに分割されていた土地を買い戻し、マノア・ヘリテージ・センターを立ち上げた。彼らは、長年かけて専門家や地域社会と共同で、かつてマノアの農民たちが豊作祈願のために訪れた“クカオオ”と呼ばれる敷地内にある農業のためのヘイアウ(古代寺院)の保存に努めた。庭園を作り直して侵略的外来種の植物を取り除き、島中から集めたハワイの固有種や絶滅危惧種の植物を植え直した。2018年の初めに「ハリー&ジャネット・ワインバーグ・ビジター・ハレ」が完成し、毎年多くの就学児が訪れる教育スペースとなった。現在、このスペースでは、フラやひょうたんを使ったアートといった、文化的なワークショップが開催されている。
クック氏が公開している貴重品の中で、もっとも注目に値するのは、メアリー氏が今も住んでいる彼らの家そのものであろう。1911年に建てられた“クアリイ”という名の歴史ある美しい家は、丘の端に堂々とそびえ立っている。その廊下を歩けば、窓枠に収まったマノア渓谷の美しい稜線の眺めのほかにも、多くの魅力が詰まった建物であることに気づくだろう。クック家が生涯を通して収集した、ハワイの歴史的な古書や写真であふれた家は、まるで建物自体が博物館であるかのようだ。
D. ハワード・ヒッチコック氏によるカウアイのタロ畑を描いた美しい油絵の風景画や、ピーター・ハード氏によるプランテーション時代の夕日に染まった昔の鉄道、ピーター・エマート氏によるホノルルダウンタウンの風景画に色を塗ったビンテージ作品。「これらの絵は、キャプテンクックとともに来航した絵描きをはじめ、ハワイを訪れた芸術家たちの目を通して見たハワイの素晴らしい歴史を綴っています」とメアリー氏。
メアリー氏は、このセンターの最大の目的について、ハワイの伝統と歴史を尊重し、保存することの大切さをハワイを訪れる人々に知ってもらうことだと語っている。「より多くの人々にハワイの歴史と遺産を知ってもらう必要があります。そして、ハワイを訪れる全ての人に彼ら自身の文化遺産も大切にしてほしいと思うのです」。

Valley Heritage

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「より多くの人々にハワイの歴史と遺産を知ってもらう必要があります」とマノア・ヘリテージ・センター共同設立者のメアリー・クック氏。

マノア・ヘリテージ・センターには、完全な状態で保存されているヘイアウとハワイ在来植物の庭園がある。メアリー・クック氏と故人で夫のサム氏は、何年もかけて専門家やコミュニティと協力してこの敷地を保存してきた。

クック夫妻は、生涯を通して初期のハワイの絵画を収集している。

“クアリリ”と呼ばれるクック一家の邸宅は、それ自体が博物館のような美しいチューダー様式の建物だ。

ハリー&ジャネット・ワインバーグ・ビジター・ハレでは、毎年、児童向けのフラやひょうたんを使ったアートといった様々なカルチャーワークショップを開催している。

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