Man playing the cello
音楽の才能を生かして

ハワイ交響楽団デビュー以来、多岐にわたって活躍するチェリストのジョシュア・ナカザワさん

グレタ・ベイゲル
写真
クリス・ローラー

ジョシュア・ナカザワさんは二つの異なる顔を持つ32歳のチェリストだ。ある時はタキシードやテールコートを着て、ハワイ交響楽団のチェロセクションに座り、ベートーベンやブラームス、ブルックナーの楽曲を演奏し、ある時にはTシャツにジーンズ姿で、敏腕ウクレレ奏者でミュージシャンのジェイク・シマブクロさんの家に向かう。二人でジャズやブルース、室内楽を取り入れた新しい音楽をプロデュースして、様々なフレーズやタイミング、テクスチュアやサウンドを試すためだ。

ナカザワさんとシマブクロさんは、ワイキキのジャズクラブ、ブルー・ノート・ハワイで定期的に共演している。2019年4月のショーで二人は、鬼才アーティストならではの才能を見事にシンクロさせた素晴らしい音楽を披露した。

「クラシック音楽家に共通して、僕が感心するのは、彼らの芸術に向き合うまっすぐな姿勢と努力を惜しまないところだよ」と42歳のシマブクロさんは語る。「彼らはオリンピック選手のように、常に最高レベルを目指して努力を重ねている。ジョシュをはじめ、クラシック音楽のミュージシャンと演奏するのはとても刺激になるんだ」。

二人は2015年6月、シマブクロさんが ハワイ・シンフォニー・オーケストラとともに、作曲家バイロン・ヤスイ氏が作曲した極めて難易度の高い『ウクレレとオーケストラのための協奏曲:カンパネラ』の世界初公演を行った際に初めて共演した。ジョアン・ファレッタさんを指揮者に迎えたこのコンサートで、ナカザワさんはアンサンブルでのプロデビューを果たした。

ステージでは、音量増幅マイクが内蔵されたアコースティックのウクレレを使用するシマブクロさんに対し、ナカザワさんは派手な電気チェロを演奏する。

ナカザワさんは、「電気楽器は、とても奥が深い世界です。ジェイクとの演奏で、今まで知らなかったこの音楽の領域について多くを学んでいます。アコースティックやエレクトリックに限らず、すべてのチェロはそれぞれに異なるニュアンスの音色を奏でることができるんです。電気チェロの演奏では特に、感情を表現することを意識しています」と語る。

ナカザワさんは4年前にオーディションを受けて、ハワイ交響楽団に入団した。ボストン生まれで、2008年にマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックを卒業し、2年後にテキサス州のサザン・メソジスト大学でアーティスト・ディプロマを取得。夏の音楽祭の一体感を楽しんでいる彼は、これまでにソリストとしてマスタークラスに参加し、カナダのバンフ・ミュージック・フェスティバル、日本のパシフィック・ミュージック・フェスト、サウスカロライナのスポレート・ミュージック・フェスティバルなどで室内楽を演奏している。

年間の運営予算年間約460万ドルのハワイ交響楽団は、毎シーズン、11のクラシック・マスター・ワークス・プログラムと、大好評のハリーポッターをテーマにしたコンサートを含む6つのポップコンサートを開催する。エグゼクティブ・ディレクターのジョナサン・パリッシュ氏が手がけるクイーンやマイケル・ジャクソンといった大御所アーティストのトリビュートシリーズ「ミュージック・ザット・ロックス」もある。

作曲家、教育者、芸術家、科学者による初の共同プロジェクトとして、ハワイ交響楽団が学生たちのために2018年5月に発表した『シンフォニー・オブ・ハワイアンバーズ』のように、ハワイのオーケストラが地元アーティストに作曲を依頼した楽曲を演奏することを高く評価するナカザワさんは、「それはコミュニティ間の絆を深めるものです」という。

ナカザワさんにとってもう一つの特筆すべきキャリアは、2017年に公開された第二次世界大戦中の日系アメリカ人兵士たちが題材の長編映画『ゴー・フォー・ブローク:オリジン・ストーリー』のサウンドトラックでのソリストとしての演奏だ。この映画のテーマ曲は、シマブクロさんが作曲したものだ。

ハワイ交響楽団のメンバーの多くは、若者のアンサンブルに音楽を教えるなど、ハワイの音楽家の育成にも多く貢献している。ナカザワさんも、教会の楽団メンバーをはじめ12名の成人を対象に個人指導を行う。オーケストラのミュージシャンの中には、ハワイ・オペラ・シアターの劇団に出演する人たちもいる。年末には、バレエ・ハワイに委託を受けたオーケストラの主要メンバー64名が『くるみ割り人形』の公演にも参加する。

ナカザワさんは、仲間とのパフォーマンスの機会を増やし、ハワイ州内の音楽家に結婚式や教会の礼拝、ホリデーコンサート、弦楽四重奏やアルバム制作といった仕事を斡旋する「マナミュージック」を2年前に設立した。

マナミュージックを介して、ハワイアンの作詞作曲家のポーラ・フガさんと仕事する機会を得たナカザワさんは、「ハワイにしばらく住んでいると、自然と皆と顔なじみになります。交響楽団に入団できたことは、素晴らしい名誉です。厳しいオーディションを通過したおかげで、新たなチャンスが生まれました」と語る。

ナカザワさんは、クラシック音楽の形式的な性質とは対照的なステージ演奏の自由でのびのびとした表現の場を楽しんでいるという。「クラシック音楽の場合、観客はプログラムの内容を知っていて、何が始まるのか予想がつくものです。僕たちのショーでは、毎晩、観客からもらうエネルギーとその都度生まれるフィーリングによって、毎回、違った音楽が演奏できるんです。それがエンターテインメントの醍醐味です」。

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Man playing the cello

チェロ奏者のナカザワさんは、4年前にオーディションを受けて、ハワイ交響楽団に入団した。

Man sitting on the edge of a stage holding a cello in front of an orchestra

「僕たちのショーでは、毎晩、観客からもらうエネルギーとその都度生まれるフィーリングによって、毎回、違った音楽が演奏できるんです」とナカザワさん。

Man playing the cello

ハワイのオーケストラが地元アーティスト作曲の曲目を演奏することを高く評価するナカザワさんは、「それはコミュニティ間の絆を深めるものです」という。

音楽の才能を生かして

ハワイ交響楽団デビュー以来、多岐にわたって活躍するチェリストのジョシュア・ナカザワさん

グレタ・ベイゲル
写真
クリス・ローラー
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ジョシュア・ナカザワさんは二つの異なる顔を持つ32歳のチェリストだ。ある時はタキシードやテールコートを着て、ハワイ交響楽団のチェロセクションに座り、ベートーベンやブラームス、ブルックナーの楽曲を演奏し、ある時にはTシャツにジーンズ姿で、敏腕ウクレレ奏者でミュージシャンのジェイク・シマブクロさんの家に向かう。二人でジャズやブルース、室内楽を取り入れた新しい音楽をプロデュースして、様々なフレーズやタイミング、テクスチュアやサウンドを試すためだ。

ナカザワさんとシマブクロさんは、ワイキキのジャズクラブ、ブルー・ノート・ハワイで定期的に共演している。2019年4月のショーで二人は、鬼才アーティストならではの才能を見事にシンクロさせた素晴らしい音楽を披露した。

「クラシック音楽家に共通して、僕が感心するのは、彼らの芸術に向き合うまっすぐな姿勢と努力を惜しまないところだよ」と42歳のシマブクロさんは語る。「彼らはオリンピック選手のように、常に最高レベルを目指して努力を重ねている。ジョシュをはじめ、クラシック音楽のミュージシャンと演奏するのはとても刺激になるんだ」。

Man sitting on the edge of a stage holding a cello in front of an orchestra

二人は2015年6月、シマブクロさんが ハワイ・シンフォニー・オーケストラとともに、作曲家バイロン・ヤスイ氏が作曲した極めて難易度の高い『ウクレレとオーケストラのための協奏曲:カンパネラ』の世界初公演を行った際に初めて共演した。ジョアン・ファレッタさんを指揮者に迎えたこのコンサートで、ナカザワさんはアンサンブルでのプロデビューを果たした。

ステージでは、音量増幅マイクが内蔵されたアコースティックのウクレレを使用するシマブクロさんに対し、ナカザワさんは派手な電気チェロを演奏する。

ナカザワさんは、「電気楽器は、とても奥が深い世界です。ジェイクとの演奏で、今まで知らなかったこの音楽の領域について多くを学んでいます。アコースティックやエレクトリックに限らず、すべてのチェロはそれぞれに異なるニュアンスの音色を奏でることができるんです。電気チェロの演奏では特に、感情を表現することを意識しています」と語る。

ナカザワさんは4年前にオーディションを受けて、ハワイ交響楽団に入団した。ボストン生まれで、2008年にマンハッタン・スクール・オブ・ミュージックを卒業し、2年後にテキサス州のサザン・メソジスト大学でアーティスト・ディプロマを取得。夏の音楽祭の一体感を楽しんでいる彼は、これまでにソリストとしてマスタークラスに参加し、カナダのバンフ・ミュージック・フェスティバル、日本のパシフィック・ミュージック・フェスト、サウスカロライナのスポレート・ミュージック・フェスティバルなどで室内楽を演奏している。

年間の運営予算年間約460万ドルのハワイ交響楽団は、毎シーズン、11のクラシック・マスター・ワークス・プログラムと、大好評のハリーポッターをテーマにしたコンサートを含む6つのポップコンサートを開催する。エグゼクティブ・ディレクターのジョナサン・パリッシュ氏が手がけるクイーンやマイケル・ジャクソンといった大御所アーティストのトリビュートシリーズ「ミュージック・ザット・ロックス」もある。

Man playing the cello

作曲家、教育者、芸術家、科学者による初の共同プロジェクトとして、ハワイ交響楽団が学生たちのために2018年5月に発表した『シンフォニー・オブ・ハワイアンバーズ』のように、ハワイのオーケストラが地元アーティストに作曲を依頼した楽曲を演奏することを高く評価するナカザワさんは、「それはコミュニティ間の絆を深めるものです」という。

ナカザワさんにとってもう一つの特筆すべきキャリアは、2017年に公開された第二次世界大戦中の日系アメリカ人兵士たちが題材の長編映画『ゴー・フォー・ブローク:オリジン・ストーリー』のサウンドトラックでのソリストとしての演奏だ。この映画のテーマ曲は、シマブクロさんが作曲したものだ。

ハワイ交響楽団のメンバーの多くは、若者のアンサンブルに音楽を教えるなど、ハワイの音楽家の育成にも多く貢献している。ナカザワさんも、教会の楽団メンバーをはじめ12名の成人を対象に個人指導を行う。オーケストラのミュージシャンの中には、ハワイ・オペラ・シアターの劇団に出演する人たちもいる。年末には、バレエ・ハワイに委託を受けたオーケストラの主要メンバー64名が『くるみ割り人形』の公演にも参加する。

ナカザワさんは、仲間とのパフォーマンスの機会を増やし、ハワイ州内の音楽家に結婚式や教会の礼拝、ホリデーコンサート、弦楽四重奏やアルバム制作といった仕事を斡旋する「マナミュージック」を2年前に設立した。

マナミュージックを介して、ハワイアンの作詞作曲家のポーラ・フガさんと仕事する機会を得たナカザワさんは、「ハワイにしばらく住んでいると、自然と皆と顔なじみになります。交響楽団に入団できたことは、素晴らしい名誉です。厳しいオーディションを通過したおかげで、新たなチャンスが生まれました」と語る。

ナカザワさんは、クラシック音楽の形式的な性質とは対照的なステージ演奏の自由でのびのびとした表現の場を楽しんでいるという。「クラシック音楽の場合、観客はプログラムの内容を知っていて、何が始まるのか予想がつくものです。僕たちのショーでは、毎晩、観客からもらうエネルギーとその都度生まれるフィーリングによって、毎回、違った音楽が演奏できるんです。それがエンターテインメントの醍醐味です」。

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